最高裁判所第三小法廷 昭和42(オ)1384 判決
主 文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理 由
上告代理人岡村大の上告理由三について。
被上告人が上告人に対し本件物件の買手を探しその売買契約の成立、代金納入を
媒介するよう委託した本件仲介契約が有償準委任契約で、その準委任事務処理によ
る上告人の報酬請求権は右売買契約の成立、代金納入を停止条件として発生する契
約であつた旨の原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の判断は、
その挙示する証拠関係に照らして首肯できる。ところで、その委任事務の処理が委
任者のためばかりでなく受任者の利益をも目的とするときは、民法六五一条一項の
規定による解除権の行使は認められないが、本件仲介契約は受任者である上告人の
利益をも目的とした準委任契約とはいえない(単に報酬の特約があるだけでは、受
任者の利益を目的とした委任契約とはいえず、他に受任者の利益を目的としている
ことの主張立証はない。)から、委任者である被上告人は、民法六五一条一項の規
定に基づいて、本件仲介契約を、いつでも、すなわち昭和三五年一二月末日の期限
前でも解除しうるものということができる。所論大審院判例は、受任者の利益をも
目的とする事案であつて、本件とその事案を異にして適切でなく、本件仲介契約の
解除を認めた原判決は正当であり、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用しえな
い。
同一について。
民法一三〇条が適用されるためには、その条件の成就を妨げた行為が信義則に違
反したことを要するところ、被上告人の本件解除権の行使は、前記上告理由三につ
いて判示したように、正当な権利行使であつて信義則に違反するとはいえないから、
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同条の適用の余地はなく、また、原判決の確定した事実によれば、本件仲介契約の
解除がなければ、被上告人と訴外Dとの間に上告人の斡旋による本件物件の売買契
約が成立するような関係にもなかつたことが明らかであり、かかる因果関係を欠く
ときも民法一三〇条の適用はないのであるから、結局、同条の適用を否定した原判
決は正当である。所論大審院判例は、本件と事案を異にして本件に適切でなく、原
判決に所論の違法はないから、諭旨は採用しない。
同二について。
前記上告理由三について判示したように、被上告人の本件解除権の行使はこれを
肯認できるところであり、民法六五一条二項の「不利ナル時期」とは、その委任の
内容である事務処理自体に関して受任者が不利益を被るべき時期と解すべく、した
がつて事務処理とは別の報酬の喪失の場合は含まないから、本件解除権の行使が上
告人の不利なる時期にされたものとはいえず、これと同趣旨の原判決は正当であつ
て、原判決に所論の違法はなく、論旨は採用しえない。�
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の
とおり判決する。
最高裁判所第三小法廷
裁判長裁判官 横 田 正 俊
裁判官 田 中 二 郎
裁判官 下 村 三 郎
裁判官 松 本 正 雄
裁判官 飯 村 義 美
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